ルール20
読ませる文章には「仕掛け」がある(2) 芥川の挑戦状。
ルール 20
■読ませる文章には「仕掛け」がある。
さらりと書かれているようでも「読ませる文章」には、様々な仕掛けがほどこされています。読者はその「仕掛け」に気がつかずに、気がつけば作品の中に没頭してしまっているわけです。物語を楽しむ読書だけでなく、その中に仕組まれている作者の「仕掛け」に意識を向けてみると、あたらしい発見が見えてくるかもしれません。
さて、今回、紹介する作品は、芥川龍之介の「薮の中」です。
この作品は、ある殺人事件が、舞台になっています。登場人物の「インタビュー(証言)」を手掛かりに、真犯人を考えていくわけですが、人物の証言がですね、それぞれ微妙に異なるので・・・この辺で止めておきますね。読む楽しみがなくなります。とにかく、犯人を探そうと読み返せば読み返すほど、作者(芥川)の巧妙な仕掛けに、はまりこんでしまう自分を感じてもらえると思います。
ちなみに、芥川の「薮の中」は、たびたびお世話になっている青空文庫さんにも、ちゃんと収録されています。無料で全文読む事ができますので、チェックしてみてください。
インターネットの電子図書館、青空文庫さんは、こちら→ http://www.aozora.gr.jp/
■文章を読んで、語り合うというコト
文章を「何度も読んで、じっくりと考える」ということは、色々な発見があります。さらに、その発見や感想を交換できる相手がいるということは、また別の楽しさがあります。特に「薮の中」のように、短めの作品ですと全体を把握しやすいのでおすすめです。天才作家が、完璧に組み立てた文章を何度も読み、作者の仕掛けを推理していく。論理的に思考を進めながらも、作者の感情を推測しながら考察を深めていく面白さは、学校の「国語の時間」とはまた違った面白さがあると思います。
実際に、私はこの「薮の中」をプリントアウトして、仲間とふたりで「謎の解明」を楽しんだことがあります。マーカーペンを引いて「この表現はつまり・・・」などと、互いの推理を交わした時間のおかげで、その人とはより親しくなれたような感じがありました。「そこは気がつかなかった」「でも、それだとこの部分と矛盾する」などと、話していくうちに「このような文学の楽しさもあるんだな」と、しみじみしたものです。
もしも「薮の中」を読んで、この作品の仕掛けを見抜き作者のメッセージを読み解いた方がいらっしゃれば、ぜひ教えてください。いつの日か一緒に語り合うことができる時を、楽しみにしています。
伝わる文章講座 佐藤 隆弘 拝