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伝わる&売れる文章のルール伝わる&売れる文章のルール
売れる文章講座

すべては模倣から始まる(1)

(その1)好きな作家に「なりきって」みよう。

 
すべての創造は模倣から始まる、という言葉がありますが、自分が尊敬する人の作風を「真似て」みることは、文章の勉強を進めていくうえで有効な方法のひとつです。
 
私は以前、進学塾の作文指導の授業で「作文嫌いの生徒達」の中学生に対して、
 

「好きな作家、漫画家、なんでもいいから、その人の言葉を真似て文章を書いてみよう」

 
という授業をしたことがあります。最初は生徒も躊躇していますが「学校の授業とは違うんだから、何を書いてもOK。むしろ、ウケ狙いでも大丈夫」と指導していくと、ムードメーカーの生徒が面白い文章を書いて、みんなを笑わせようとしてくれたりもします。
 
今でも思い出すのは、H君という生徒なのですが、彼は熱心に読んでいるマンガの台詞や情景描写の文章を巧みに取り入れた作文を書いてくれたことがありました。私がそれを教室で読むと、生徒はみんな大爆笑でH君の作文を絶賛しました。「〇〇の台詞だ!」とか「△△っぱい!」と盛り上がったのです。
 
勉強が苦手だったH君にとって、みんなに褒められるという体験が嬉しかったのでしょう。「先生! 俺、作文なら得意ですよ!」と、作文の授業の時には率先して取り組んでくれるようになりました。そうやってムードメーカーのH君が場を作ってくれることで、良い学習環境ができあがったのでした。
 
 

「嫌い!」から「嫌いじゃない」へ。

 
このような環境が整ったのなら、次は「どんどん文章を書かせる(絶対量を増やす)」こと。そして「基本的な技法」を折々に指導していくことです。
 

「ここで語句の順番を逆にすると、印象が強くなるね? これが『倒置法』だよ」

 
などと、生徒が考えた文章を添削しながら技法を、指導していくことで、基本的な知識を広げていきます。「何を書けばよいかわからない」→「好きな作家の真似をしてみよう」→「これでいいんだ!」→「書く事が面白い」→「だから、書き続けられる」そう感じることができる環境を作っておけば、あとは要所に指導を加え、よいところを伸ばしていけばいいわけです。
 
最初から「自分らしい文章を書きなさい。はいスタート!」では、もともと文章を書くことが得意な生徒でないと厳しいもの。「クロールの泳ぎかたのイラスト」を見せて「あとは自由に泳いでみなさい」と言われても泳げないことと同じです。最初は、水に慣れて身体の動かし方を覚え「もっと泳いでみたい」と思わせることが大切なように、文章を書く時も「真似て、書き上げて、それを他人の前で発表する」という段階が必要だと私は考えていたのです。
 
「嫌い」「苦手」と感じる分野に挑戦する事は、自覚している以上に難しいものです。ちょっとやそっとで意識を変えることができるなら、そもそも「嫌い」にはなりません。根っこの部分はかなり深く長いものです。その重い腰を上げるきっかけのひとつとして、好きな作家の作風をまねてみるのは、有効な演習のひとつとなります。まずは「好きな作家」「今の自分にとって理想の文章」を探し、演習を続けてみて下さい。(その2)へつづく
 


伝わる文章講座 佐藤 隆弘 拝


リニューアルの追伸
私の場合、ここで「著作権」についての指導も行うようにしていました。無断複製が法的に罰せられるというだけではなく「作者(表現者)に対しての敬意と尊敬」を育てられるように授業を行っていました。あくまでもコピーは演習のステップ。この点を勘違いしないように、注意して下さい。(関連 すべては模倣から始まる(4)へ)


(その2)手書きで書いてみよう。

  
実際に練習を進めていく際に、みなさんに、おすすめしたい方法がひとつあります。それは何かと言いますと『手書きで、書き写してみる』と、いうことです。
 
みなさんが好きな作家(作品)の文章を、手書きで書き写してみてください。特別な道具は必要ありません。ホームセンターで販売されている数百円程度のノートと、筆記用具を用意して書いていけばいいのです。
 
 

「手書き」だから、わかること。

 
このようなアドバイスをすると、パソコンに入力していくのではダメですか? という質問が必ずといっていいほどあるのですが、そのような時は「手書きで!」と答えるようにしています。
 
なぜ手書きが効果的なのかは、私もよくはわかりません。ただ、私自身が体験から学んだ経験として、手書きだからこそ「何かがわかる+染み込んでくる」ような感覚があるからです。おそらく手書きの場合は「一字一句」手を動かして記入していきますから、キーボードで入力する時とは異なった「細かな部分」に気がつきやすいのではないか、と考えています。知らない街を車で移動するよりも、徒歩で一歩一歩踏みしめながら歩いた方が、気がつく情報や感覚が段違いに多くなることと同じです。
 
実際のところ、びっしりと書き込まれたノートが、一冊、二冊と、机の横に並んでいく様子を眺めるのは、なかなか壮観です。「これだけ演習した」と具体的に確認できるので、達成感(のようなもの)も感じられます。私は今までに書き写したノートを数十冊ほど保管しているのですが、時々読み返したりすることで新しい発見が得られることも少なくありません。
 
ちなみに書き写すものは、小説でもエッセイでも、広告のキャッチコピーでも、なんでも構いません。ただ「自分も、このような文章が書きたい」などと目的に合わせた文章を一字一句ていねいに、書き写していけばいいのです。ではひとまずここでパソコンの電源を落とし、目の前のペンを手にとって、実際に体感してみてください。(その3)へつづく
 


伝わる文章講座  佐藤 隆弘 拝


リニューアルの追伸
 
新しい技術を身に着ける時は「効率重視」ではなく「地道な演習」を積み重ねていく時間が必要だと私は考えています。そして、どうせ通らなければいけないステップならば、丁寧に楽しみながら進んでみたいとも思います。ある程度の演習を積み重ねたならば、徒歩ではなく車や電車での移動でも必要な情報を拾い上げる技術と経験が身についていますが、まずは徒歩で歩く時間を一定量積み重ねてみることも、長い人生の中では必要なのではないかと考えています。

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