ルール その11 言葉の天才に学ぼう。
さて、久し振りに「問題」です。
問題:『小説の神様』と呼ばれた作家名を答えなさい。
↓
↓
↓「神様」です。
↓ヒント:白樺を創刊しました。
↓
↓
↓ さあ、答えです。
↓
↓
答え:『志賀 直哉』
志賀直哉は、私(佐藤)と同じ宮城県の出身ということもあり好きな作家の一人です。「不正に反発し不自然や不調和には妥協しなかった」などといわれますが、その背後に感じる「温かな人間性」に惹かれるものを感じるからです。
特に「小僧の神様」は、読んでいると、登場人物の「優しさ」が逆に切なくなるような、なんともいえない「人間らしさ」が感じられて、とても好きな作品のひとつですね。
簡潔で的確な描写。
志賀直哉の文章は『簡潔で的確な描写』と、評されます。例えば「城の崎にて」では、
山の手線の電車に跳ね飛ばされて怪我をした、其後養生に1人で但馬の城崎温泉に出掛けた。兎に角要心は肝心だからといわれて来た。・・頭は未だ何だか明瞭しない。物忘れが烈しくなった。然し気分は近年になく静まって、落ち着いたいい気持ちがしていた。稲の穫入れの始まる頃で、気候もよかったのだ。
志賀直哉「城の崎にて」一部抜粋
冒頭部分の短い文章ですが、これだけで主人公の状況や心境が、すっきりと伝わってきますよね。試しに、音読してみて下さい。どうですか? 読みやすいし、内容もすっきりと頭に入ってきませんか? 一見すると、シンプルに感じる文章でも、そこには「神様」と呼ばれるだけの技術があるんですよね。さらりと書いているようで、実際には膨大な才能とセンスの上に表現された文章。そのあたりを、じっくりと感じてみたいものです。
文豪の文章を、音読しよう。書き写そう。
志賀直哉の文章を「お手本にしましょう」と、指導している文章講座を目にしたことがあります。確かに、志賀直哉の文章は、じっくり味わえば味わうほど、その凄さがわかってくるような気がします。小説というとストーリーを追うだけで、終わりにしてしまう方も多いかもしれません。もちろん、それはそれで良いのですが、みなさんのように「伝わる文章」を勉強されている方は、そこで終わりにしてしまってはもったいない。
ストーリーを味わうことと同時に文体や技法も読み取って、自分のものにしたいものです。音読したり書き写してみたり、様々な視点から読み返してみると色々なヒントが見つかると思います。ぜひ試してみてください。
※関連:
ルールその40「追う」から「映す」読書へ
読書日記 十二冊目:小僧の神様 (志賀直哉)
(ブログ)初めての奈良旅 志賀直哉旧居へ
志賀直哉 | |
---|---|
略歴 | 1883年 現在の石巻市に生まれる。 1906年 東京帝国大学へ入学。 1908年 処女作となる『或る朝』発表。 1910年 『白樺』を創刊。 1913年 『清兵衛と瓢箪』『范の犯罪』を発表。 1914年 勘解由小路康子と婚約。 1917年 『城ノ崎にて』『和解』を発表。 1920年 『小僧の神様』『焚火』を発表。 1921年 『暗夜行路』の前編発表。 1937年 『暗夜行路』の後編発表。 1949年 文化勲章を受章。 1971年 10月21日死去。 |