目の前の壁を越える瞬間(2)
(その3)他人と自分の「壁の高さ」を比較してはいないか?
ここで大切なことがひとつ。あなたの壁と、周りの人の壁はちがうのだ、ということ。
あなたが「やったよ。25m泳げるようになったよ!」と、ひとりで喜びを噛み締めていたとします。その時ふと、別のコースで練習している小学生の姿が目に飛び込んできました。その子は50m、100mと淡々と泳ぎ続けています。横にいるコーチの激励を受けながら、さらに記録を伸ばそうと練習しているようです。
その時あなたは「ああ、俺なんてまだ25mだし」と思うかもしれません。がんばって壁を越えたつもりになっていたけれど、なんだよ何も越えていないじゃないか。小学生でもすいすい泳げる距離が泳げるようになったからといって何をよろこんでいるんだ・・・。 と、思うかもしれません。急にやる気を失ってしまうかもしれません。
頑張っていた自分のことを思い出して、ちょっと、自分が惨めに思えるかもしれません。
「一番最初に壁を越えた感覚 =最初の成功体験」が支えになる。
いいえ、ちがいます。惨めでも、小さくもありません。あなたは確かに「壁を越えた」んです。
「全く泳げなかった」→「25m泳げるようになった」
という出発点から、自分は始めたのだ。ゼロから始めて、ここまでやってこれたんだ、がんばったんだ、と出発点をふりかえり、しっかりと噛み締める必要があるのです。←ここ、重要です。
その壁を越えるために、どれだけ真面目にコツコツと、努力を積み重ねてきたのかは、あなたしか知りません。そしてその経験は、あなただけの大切な資産です。その資産を活用して、次の壁を乗り越えていくわけです。自分の壁をひとつ越えた。その経験を活用して、次の壁も越えた。他の人から見たら、ささやかな壁かもしれませんが、大きな壁を越えるには、無数の小さな壁を「越え続け」る必要があります。
そこに必要なのが「一番最初に壁を越えた感覚 =最初の成功体験」なのです。これを、絶対に忘れてはいけません。あなたは、自分自身の壁を越えたのです。少し大げさでもいいですから、その感情を大きく盛り上げて自分で自分を認めてあげましょう。周りとの「壁の高さ」を比較する必要はないんですよ。(その4)へつづく)
伝わる文章講座 佐藤 隆弘 拝
リニューアルの追記
比較する相手は、他人ではなく「過去の自分」。記録を取って、その成長を確かめていく。そして目標に向けての軌道修正を行っていく。大切なことなので繰り返しますが、目の前の壁を越える時に確認するのは「他人ではなく、過去の自分」と、いうことです。
(その4)強いこだわりと、頑固さは、似ているようで違うもの。
このように、目の前の壁を越えるべく試行錯誤をしている段階で、自分が予想もしていなかった部分を指摘されたり修正を余儀なくされたりする場合があります。
その時に、
1)なるほど、その方向へ進めば良かったのか!
2)いや、あくまでも自分のやり方を貫くんだ。
このどちらを選ぶかの見極めが大切になってきます。方向転換をするか今のままで続行するか、ということですね。
思い込みが、盲点を作ってしまう。
例えば、ホームページのリニューアルの相談を受けたとします。クライアントからの希望は「デザインはそのままで、文章を中心にリニューアルしてほしい」という内容だったとします。この時「文章の改善が、最優先事項」と感じた場合は、依頼の内容通り、文章の改善案を提案していくわけですが「文章の完成度は高い。それよりもデザインが訪問者の印象を損なっているのではないか。魅力を伝えきれていないのではないか」と感じた場合は「デザインの変更が、最優先かもしれません」とアドバイスさせていただくわけです。
この時「なるほど。では文章とデザインの両方を作り直す方向で」と話が進んでいくのならば、問題はありません。そこからは、見えてきた課題をひとつひとつ越えていくだけです。ところが「いや、絶対に文章だけ変更したい。デザインの変更は必要ない」と提案を拒否されてしまうと、壁を越えられる可能性が狭まってしまいます。客観的な視点から「壁を越えるために必要なこと」を提案されても「〇〇だけ変更すれば、なんとかなるはずだ!」と考えてしまうことで、他の部分が見えなくなってしまい、大きな盲点を作ってしまうのです。
「強い意志」と「頑固」の違い。
強い意志と頑固さは紙一重の部分があります。信念は未知の世界を切り裂く強い剣(のようなもの)になりますが、頑固さは、そこに留まり進化を妨げる原因になるものです。特に、長期に渡って同じ課題(壁)に取り組んでいる場合は、頑固さの方へ傾いてしまう場合が少なくありません。ここの見極めが、非常に大切になってくるわけです。
いつも同じところで失敗してしまう。何年も同じようなところで乗り越えられずに終わってしまっている人は、今回の内容を確認してみてください。自分には関係ないと感じる部分にこそ、自分が無意識のうちに避けてしまっていた「なにか」が隠れているものだからです。そこに「壁を越える鍵」が、隠れているものだからです。(その5)へつづく
伝わる文章講座 佐藤 隆弘 拝
リニューアルの追記
実は「壁を越えて行く」際に必要となる能力のひとつが、今回解説した「選択・見極める力」だと私は考えています。何かを作っていく作業というものは選択の連続です。大きなことから細かな部分まで、たくさんの選択を繰り返して完成に近づけていきます。判断に迷った時、もしくは「なぜ、あのような意見を言うのだろう」と他者のアドバイスが気になった時、今回の内容を思い出してください。そして、目標に向けて見極めてください。