その54 最初から「最高速」で走り始める。走り続ける。
いきなり「ラスボス」
映画やゲームの世界では「一番強い敵 =ラスボス」は、いちばん最後に登場します。目の前の「今の自分よりも、少し強い敵」に挑戦し、成長していきながら最終目標に達するわけです。
ところが、現実の世界ではそうはいきません。いきなり「ラスボス」が登場する。歩き出した瞬間に、叩きのめされる。そこでゲームオーバー、ということも少なくありません。こちらの都合は関係ないんです。準備の途中でも、待ちくたびれて休憩をしていた時でも関係ありません。ある日突然音もなくやってきて、目の前に立ちはだかるのが、私たちが生活している現実の世界です。「電源を切れば再出発」できない世界です。
最初から120%で、すべてを出し切る。
広告を制作する時も、同じです。広告は「一発勝負」です。目の前に表れるのは「常にラスボス」なのです。恐る恐る作った広告では、弱い敵なら倒せるかもしれませんが、ラスボスクラスでは、触れる事もできないでしょう。
次はないぞ、最初からラスボスだぞ、チャンスはこの一度きりだぞ、と、その瞬間のために、刀を研ぎ続ける。積み重ねていく。ここは次回まで温めておこう。空っぽになるのは怖いから少し余力を残しておこう。その「余力」の分だけエネルギーが不足して、目標まで届かないかもしれません。それが現実の世界で「表現することで勝負する」と、いうことだと思うのです。
最高速に慣れると、最高速が普通の速度になる。
不思議なもので、常に最高速ギリギリの状態に、自分の感性(のようなもの)を研いでいくと、その状態が楽しくなってきます。加速状態が普通の状態になります。そして、もっともっと加速できるのではないか。自分の限界は、まだまだ先の方にあるのではないか、と感じられるようになってきます。
先月まで最高速だと思っていた速度が、今月はひどく遅く感じられてしまう。先週まで恐怖を感じるくらいだった速度域が、今週は笑顔の鼻歌まじりで、周りを見渡せるくらいの余裕ができている。そのような戦い(あえて、戦いと表現しますけれど)を、続けた人のところには、気がついたら「ラスボスを倒してしまっていた」とか、もしくは全く別の世界だけど、居心地の良い世界に辿りついていた、というような幸運を手にできるのではないか、と思うわけです。
明日、あなたの目の前に「ラスボス」が、表れるかもしれません。表れないかもしれません。それでも、どちらにせよ、作り続けることでしか、自分の未来は作れないと思うのです。想像しただけで、わくわくするような未来は、最高速の世界を走り続けている人のところに、やってくるのかもしれません。
伝わる文章講座 佐藤 隆弘 拝
リニューアルの追伸
本文では「120%出し切る」と表現していますが、これは比喩的表現も含まれています。実際のところは「表現するのは80%」「蓄積しておくのが20%」といったところで、出す事と同時に蓄積していく作業も同時進行で必要になってきます。この「80%」で「100%満足していただける制作物を作れる」までの「技術を磨いておく」ことが大切になるということです。息を吐いたら吸う。最初は120%のエネルギーが必要になるけれど、経験と技術で80%まで消費エネルギーを削減できる。と、いうことです。
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