売れる文章のルール35 神は細部にこそ宿る。
天才達が、口にする言葉。
今から数年前にパリに行った時の目的のひとつに、ピエール・エルメというパティシエの店に行くということがありました。朝一番、まだ薄暗いパリの石畳の道を連れと二人で、テクテクと歩く。憧れのルーブル美術館の前を過ぎセーヌ河にかかる橋を渡り、左岸に入る。サンジェルマン・デ・プレ教会の前を通り、淡いブルーで彩られたエルメショップを見つけた時は、本当にワクワクしました。そして、実際に「エルメの本物のケーキ」を食べた時は「これだけでも、パリに来たかいがあった。飛行機は怖くて、嫌だけど、それ以上の価値があった」と、心から思ったものです。
帰国後、エルメ氏が、ある雑誌の記事の中で「神は細部にこそ宿る」と、話しているのを目にしました。神は細部にこそ宿る・・・以来数年間、この言葉が僕の頭の中で繰り返されることになりました。神は細部にこそ宿る、とはどのような意味なのだろう?
■神は『細部にこそ』宿る
今私は、この言葉をこんな風に考えています。
地道で、真面目な努力を積み重ねる事。ひとつひとつの言葉を丁寧に、靴を一足一足磨くみたいに何度も何度も見直し、書き直し、研鑽を続けていくこと。本当に、派手で、大きなものを作りたいのなら、地味で細かな作業に時間をかけて、じっくりと取り組まなければならない。そんな風にして地味だけど「細かい作業の積み重ね」を通して、出来上がったメッセージにこそ、人を魅了する「何か」が生まれるのではないか?素朴だけど、たおやかな力強さが宿るのではないか?
そんな風に、考えています。素晴らしく、斬新なアイデアも表現もすべては『平凡で細かな部分の積み重ね』なのだ。ある日突然何かが生まれる、ということではない。生み出すためには、生み出すだけの「育てる時間」が必要なのだ。と、いうことですね。
■時間をかけた作業に、宿るモノ
ビジネスをしていると、ひとつの広告や企画などがきっかけで、売り上げが2倍、3倍に跳ね上がるような出来事も決して珍しくはありません。ただし、そのような「幸運の瞬間」を手にされた人は、そこまでに、じっくりと時間をかけて準備を重ねていく経験を通っているものです。
少なくとも、私の周りで成功している人達はそうですね。結果だけを見ると華やかで、みるみる成功したように見えるけれど、じつは地味で暗い(?)時間を積み重ねているんです。たとえメディアに取り上げられるようなことがあっても、その華やかさと周りの変化に動揺することなく、いつも通りに細かな作業を淡々と繰り返していらっしゃいます。だからこそ、一発屋でおわることなく利益を出し続けていらっしゃるのだと思います。
表面的な部分だけを取り上げて、解説しているような情報が溢れていますが、本質的な部分はそこではない。出発から到着まで、すべての過程に意識を向け細やかな部分を大切にしているのだ。何かを作ろうとする時には、そう自分に言い聞かせて励んでいきたいものです。
伝わる文章講座 佐藤 隆弘 拝