ルール24
強いキャッチコピーが生まれる場とは?
ルール 24
あなたが『本当に売りたいもの』を、ひとつ選ぶ。
先日『スターバックス 成功物語 ハワード・シュルツ ドリー・ジョーンズ・ヤング著 日経BP社』と、いう本を読みました。読者の中にも、活用している方が多いと思う『スタバ』の本ですが、この中に以下のような文章がありました。
市場調査をしたら、コーヒー事業に乗り出すには時期が悪いという結果が出ていただろう。(中略)しかし、スターバックスの創立者たちは市場調査などはせず、自分たちに必要なこと、つまり良質のコーヒー豆だけを扱うことだけに専念したのである。(41ページ)
あなたが引きつけられるものは、ほかの人たちも引きつける。(144ページ)
スターバックス 成功物語
ハワード・シュルツ ドリー・ジョーンズ・ヤング著日経BP社 より
実際のところ、私が依頼を受けてキャッチコピーを考える時に、担当者の方達から、
「自分達が、本当にいいと思うものだから、本気で売っていきたい」
と、いう気持ちがビシビシと伝わってくる場合には、こちらもそのエネルギーに巻き込まれて、良い相乗効果が生まれてくるものです。よし、では一緒に考えていきましょう! と昔からの仲間のように、同じ目標に向かって歩き始めることができるものです。
冷えきった場所からは、冷えた言葉しか生まれてきません。あたたかな場所からは、上へ登っていく言葉が溢れていきます。まずは「本当にこれはいい商品だ。早くお客さんに届けたい!」という熱意がうずまいている場をつくることが、何かを作る時には本当に重要だと思うのです。
『本当にそれが今、自分達が伝えたいことなのか?』
厳しい言い方に、なってしまいますが、それでも大切なことなのでお話しさせていただきますが、表面的な特徴や、文章の技法的なもの、言葉の言い回しなどを変更しただけでは、たくさんの広告の中から読んでいただけるような、見つけていただけるようなキャッチコピーにはならないものです。
ましてや「キャッチコピーを変更すれば、売れるだろう」というような冷えた場では、どんなにコピーライターが頭をひねったとしても、それなりのキャッチコピーしか生まれてきません。
この話も聞いてくれ。この資料も読んでくれ。こちらの試作品を試してくれ。え? なるほどすぐに用意します! と「突き刺さるような情熱が溢れている現場」から「突き刺さるような言葉」が見つかっていきます。言葉というものは、全くのゼロの静かな場から生まれてくるのではなく、みなさん自身が「この良さを伝えたい」と考えている情熱のエネルギーが、そのまま「言葉」として表現(変換)されるのだと、考えてください。
ここが本質的な部分です。ゼロはどんなに、かけ算をしてもゼロです。逆に、一度燃えあがった情熱は加速度的に大きくなっていきます。まずはキャッチコピーを書き始める前に、スターバックスの創立者のように、
「自分たちに必要なこと、つまり良質のコーヒー豆だけを扱うことだけに専念」
といった立ち位置を固めることから、見直してみてください。何のために、今、自分達は「この商品を売ろうと思っているのか?」「自分たちの会社は、世界に何を提供できるのか?」を考えてみてください。みなさんの情熱が最高値に達した時、そのエネルギーの周りには、ゆっくりとでも確実に「強い言葉」が引き寄せられてくるはずです。
伝わる文章講座 佐藤 隆弘 拝
リニューアルの追記
言葉は場のエネルギーが変換されたもの。なぜ当時の私は、このようなことを考えていたのか? 今となっては謎です。しかし今あらためて感じることは、見えない世界の話ですから「それ」を科学的に証明することはできないけれど、言葉に力が宿るとしたならば、たしかに「その差」かもしれない。ということです。